原爆文学は戦後の日本文学の中で非常に大切な文学形式であり、重要な位置を占めている。また、さまざまな角度から自分の目で見て、体験した原爆によってもたらされた災害と被爆者の苦しみを描写した原爆作家が次々と現れた。それらの中に林京子（1930～）が優れた女性作家の一人であると言われる。少女時代に被爆の災難に遭って、一生消えない傷が残された。さらに世間に「被爆女」と名づけられた。1945年8月9日以来、彼女が被爆の影に縛られ、解放されずに苦しんでいた。そのため、林京子の多くの作品の中に被爆した女性たちの苦しみや悲しみなどを描いた。同時に、近代以来、性差別を廃止し、女性の自由と解放を主張するフェミニズムが発展していてるため、林京子の作品が多少その影響をされたに違いない。また作品で父権製や良妻賢母が存在する日本社会で抑圧された女性たちが自由平等を求める姿も描写していたのである。その故、林京子の作品を研究する時にあたって、「原爆」や「核」などに着目することではなく、作品の中で表現されたフェミニズムの発展によって影響された女性像がどうな変化を起こしているのかということについて、注意すべきだと思う。　　本論は林京子のいくつかの作品における女性像を巡って、フェミニズムの視点から展開したいと思う。第1章は林京子本人と日本におけるフェミニズム運動について紹介する。第2章では『三界の家』と『黄砂』といった作品を中心にして、戦前日本社会で女性の生存状況を分析し、また親子関係を根本とする観念で女性が家に囲い込まれた良妻賢母から圧迫され、苦しむ女性の姿と群れから排除され、社会に反抗できないお清さんという女性像を分析する。第3章は『無きが如き』を中心にして八月九日から人生が負へ転換した「被爆女」を分析する。第4章は『谷間』という作品を中心にし、作中に現されたジェンダーで主人公としての「なつこ」と「草男」という二つの人物像を考察し、さらに男女関係を解明する。第5章は『希望』という作品を中心にし、エコフェミニズムで「女」と「自然」との関係を分析し、「貴子」という人物を「遺伝子の恐怖」をどう乗り越えて「自然体」と一体化したのかと研究し、さらに作者が今になると見方がどう変わっているかと探求する。終わりの部分では本論文の内容をまとめ、フェミニズムで林京子の文学における女性像を分析する意義を分析し、林京子が日本文学への貢献を評価する。