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経済環境の変動の中で、中国における日系企業は欧米企業や中国地場企業などとのさらなる激しい競争に巻き込まれるには間違いない。中国市場での成功を収めるには、日系企業は中国現地での生産優位性を維持するとともに、経営優位性の確立を求められる。今日、多くの日系企業は中国での販売現地化を図ろうにも、現実が厳しい。本文の目的は、中国の消費市場拡大伴い、競争が激化しつつある市場環境及び日米系企業の現地化状況などを踏まえ、マクロの視点から、日系企業の販売現地化の現状と問題点を分析して、その問題点の解決方策を探る。
直接投資消費市場販売現地化一、激化する国内市場の競争環境
中国の消費市場規模は急速に拡大している中で、日系企業の中国進出は加速しつつある。日本貿易振興会が実施したアンケート調査により、日本企業が販売先として重要視している市場は中国市場のウェイトが最も高く、それぞれ80.6%と28.3%である。今後の開拓市場に関する回答を見ると、ASEAN諸国の24.6%に対して中国は61.7%である。このアンケートからも日本企業の中国市場獲得意識が今後さらに高まることは確実と思われる。日本企業が中国に本格的に進出を開始してからほぼ15年、ようやく近年、中国国内市場での現地販売化への関心が高まってきた。しかし、日系企業の中国市場販売においては現地販売ルート整備や販売人材不足等の販売現地化の問題も顕在化させた。2003年度中国現地法人の撤退、移転の主な理由は販売不振である。
日系企業と欧米企業の中国市場をめぐる競争がますます激しくなっている。今後、中国市場の自由化に伴い、市場参入を目的とした欧米系企業の中国進出が更なる増加傾向にあるから、日系企業にとって中国市場における競争の厳しさがさらに増大することは間違いない。技術力とブランド力を有する日系企業は激化しつつある競争環境の中で、中国市場を販売先として、現地消費者に合う新製品の開発、生産コストの引下げ、中国国内販売ルートの整備、現地人材の有効活用などの課題の解決を迫られている。
現在の日系企業は人材流失の圧力に直面している。上海交大正源企業コンサルティング会社と日本能率協会がこのほど、ダイキン、オムロン、住友、三井化学など、数十社の日系企業に勤務している1万人以上の社員を対象に、「日系企業の給与•福祉に関する調査」を行い、大学卒業生の初任給、一般社員と管理職の給与の比較において、日系企業のほうが欧米の企業を大きく下回っていることが明らかとなった。
二、日米企業の販売現地化の比較
日本企業の中国進出や中国でのビジネスの難しさとして、商品を売っても代金回収がうまくできない、商慣行に合わないなどが挙げられる。中国の投資環境•経営環境に問題があるといわれている。一方、米国企業の中国現地法人は、中国市場での販売を重視し、これに成功した。中国における2003年度外資系企業500社売上ランキングのトップ10社によれば、米系企業のモトローラ(1位)、GM(8位)、デル(10位)が上位10社にランキングされている。これに対し、日系企業は1社も入らなかった。同じ環境で成功している米系企業が存在するのはなぜか。以下にその現状と原因を述べる。
1999年と2000年,米系企業の10%以上に対し日系企業の収益率は逆にマイナスであった。2001年日系企業の収益率は5.5%に達したが、米系企業収益率と比べ、未だ7ポイントの差があることがわかる。日系企業は、中国市場において、その需要の獲得に向けた取組みを拡大させているものの、米国企業と比較すれば、十分な収益を獲得できていない状況にあるということが言える。
収益率低下の原因を分析すれば、以下の要因を考えられる。まずは1990年代後半から、日本の対中大型投資は減少していた。中小企業の進出については回復していたが、素材産業等、中国経済にとってインパクトの強い大規模な投資が減っているため、中国における日系企業のプレゼンスは、契約ベースでも実行ベースでも、米系企業に比べると低かった。米系企業の対中直接投資実行額は2001年の累積実行額は日本を抜いて第2位を占めるようになった、米国の対中投資の方は大型化している。
もう一つ収益率に影響を与える要因は、日米企業の投資動機の相違である。米系企業の多くは中国市場に関して「現地市場対応型」の戦略に最初から絞り込み、中国の潜在市場の獲得を市場目標として明確にしている。これに対して、日系企業の中で、複数の参入動機をもち、「コスト競争対応型」と「現地市場対応型」の戦略を同時に展開している企業が多い。つまり、日系企業が対中投資した主要な目的の中に、豊富な労働力の活用があるのに対して、米系企業の参入動機はきわめて単純明快であり、中国の「潜在市場の大きさ」という点に集中している。また、日本企業は労働集約的産業に投資するのが多いことに対し、米系企業はハイテク産業、つまり、消費需要が大幅に増加することが可能な産業への先取り的進出が多い。例えば、モトローラ、GM、デルはそれぞれ通信産業、自動車産業、IT産業に進出している、これらの産業は市場開拓しやすいし、実績を出しやすいものである。
日本企業の生産現場重視や品質重視などの姿勢は中国で高く評価されているが、販売には必ずしもつながっていない。これに対して、欧米企業の総経理(社長)は、ほとんどが販売担当であることがよく言われる。欧米企業の販売に関する営業?顧客開拓と取引先?調達先の選定の権限委譲比率はそれぞれ92.3、66.7%である、米系企業は如何に現地販売を重視するのがわかる。意思決定権限の委譲によって中国消費市場の変化に対して、迅速な対応を取ることができると考えられる。例えば、中国市場において企業経営の徹底現地化をおこない、現地人を通じて、販売現地化を達成した米系企業のコカ•コーラは、中国市場の将来性と重要性を認識し、たとえ投資回収が遅れても、利益を海外送金できなくても、利益の再投資をすることや現地人経営者の権限委譲を通じて流通配送拠点の建設、配送ネットワークの構築、新たな販売拠点の開拓などより、将来の市場を確保する現地経営戦略を実施した。現在中国は、同社の世界市場でもっとも成長している市場となっており、中国市場での高いシェアを獲得している。現在、炭酸飲料市場で46%のシェアを占めている。
一方、日系企業は意思決定スピードの遅延により、日系企業のマーケットニーズに見合った製品の開発•投入や、現地における効率的な生産?調達体制の構築が阻害され、中国のマーケット及び消費者からも徐々に敬遠されている。製品販売などの場面における、現地の独特な商慣行に根ざしたネットワークを活用し切れないという非効率が生じている。
三、販売現地化の問題点
日系企業にとって、中国での販売現地化の強化と再構築が求められている。以下に日系企業の販売現地化の経営戦略における問題点を論じる。
1.現地販売ルート整備の遅れ
多くの日本企業は、長年続いてきた香港企業とのビジネス関係に縛られ、中国現地での販売ルートの整備、現地人材の育成は遅れている。今までは中国での外国企業に対する販売規制の問題に加えて、日系企業の中國国内販売は販売ルートの構築を避けて通ってきたケースが多かった。その代わりに資金力があり、規模の大きな総合卸業者に販売を任せ、つまり、一級卸から末端の販売店までの販売管理にメーカーが関与することが少なかった。その結果、メーカーの販売ルートに対する支配力は非常に弱いものとなっている。多くの販売代理店は、複数メーカーの製品を競わせながら、より有利な取引条件を出すことだけに関心がある。
2.現地販売体制構築の遅れ
欧米企業は、最初から中国市場を狙う進出が多い。多くの販売規制に対しては、中国の変化に期待しながら時には外圧で規制緩和を促したり、時には自社に有利な取引をしてもらうために管理部門と交渉したりして、規制緩和の先取りをしてきた。一部欧米企業は約10年も前から実質上の販売機能を構築していた。このような規制への対応の相違が、中国における日系企業の販売現地化を遅れる要因の一つと考えられる。
3.「持ち帰り型」の日系企業の戦略が現地販売に与える影響
まず、現地販売の強化への影響がある。親企業と現地工場との間の仕切り価格が現地経営を左右する。仕切り価格は、親企業の経営状況に基づいて設定し、調整されることが多い。親企業の経営にとっての調整機能を持っている。一方、現地工場においては、この調整機能を遂行するのみである。現地企業の経営業績には直接表れにくい構造がある。その結果、工場管理に対する評価基準も曖昧になる。現地経営管理者は、現地販売の強化への関心が薄くなる。
次に、現地人材育成への影響である。「持ち帰り型」の工場管理は、労動力の確保や訓練が中心である。現地経営にかかわる購買、販売、管理などの現地人材は不要である。中国に進出し、長い期間をへて、日本企業には工場管理のノウハウは蓄積されても、現地人材育成制度を欠いているため、現地販売を担う現地人材の育成はできなかった。その結果、現地代理店に任せの販売が多いのである。
4.現地人材育成の遅れ
「企業は人なり」という限り、人材育成はあらゆる事業成功上の重要なポイントになるべきものであり、日系企業の中国進出にとってもそれは一層重要性を増すものである。多くの日系企業には、資金力?技術力を持っているものの、人材力欠如のため、現地販売市場において、苦戦している。その原因を探求すれば、以下の原因を考えられる。
a)日系企業の中国進出当初の目的の多くが「労動力集約型加工生産」であった。つまり、工場運営の重点は労動者の労動力にあり、人材への重視と関心が最初から低かった。
b)日系企業が中国に進出した後も、日本国内の管理モデルを利用し、チームワークを強調し、社員の個性の発展を重視していない。
c)多くの日系企業では、部長、ひいては課長以上のポストを日本人のみに限定しているため、もっと大きな個人発展の余地の獲得をめざす中国の管理人材や技術者を引き止められないのも当然なことである。
四、販売現地化の促進
中国消費市場にあわせる活用対策を打ち出せば、日系企業にとって現地販売の更なる進展と拡大が十分期待できる。以下に日系企業の中国における販売現地化の促進方策を提案する。
第一に、日系企業は急速な環境変化に合わせて、販売ルート整備の見直しと販売体制の構築が必要である。従来の販売ルートを強化すると同時に、現地における独自能力の市場開拓による新規販売ネットワークを築くことを通じて、販売ルートに対する支配力を高め、売上代金未回収の発生を回避することができる。
第二に、販売代金回収の難しさを解消するために、販売現地化戦略として、相手に一定の信用供与が必要である。相手への信用供与を通じての代金回収への努力は、ビジネス事故やリスクを避ける有効な方法と考えられる。
第三に、中国での現地販売管理難はよくいわれている。多くの日系企業によるさまざまな取り組みが進められている。中国におけるIT技術の普及に目をつけて、販売管理システムの構築で成果を出しつつある日系企業もある。
第四に、現地販売を強化するために、ブランド力の構築、製品の魅力作り、中国における存在感の向上、そして企業のイメージ作りなどの広報活動の活用が必要である。今後、中国消費市場における競争の激化が宣伝•広告の激化をもたらすであろうと考えられる。情報が少ない時代は、少ない宣伝•広告で高い効果が得られていたのに対して、いまは多種多様な情報が氾濫し、消費者の心をつかむことはますます難しくなっている。このような背景の中で、宣伝?広告の効率をいかにあげるかが重要になってくる。現地人材の頭脳を通じて、現地消費者に商品を買いたい感覚を持たせる商品宣伝の工夫が不可欠である。
第五に、中國消費市場における競争相手との販売主導権競合で有利なポジションを確保するためには、製品価格競争優位性の保持と強化がもうひとつ重要なポイントである。この優位性を達成するには、現地消費市場ニーズに合わせる製品開発と現地調達率の向上が必要となる。中国消費者に合わせる製品の開発は中国現地風土に慣れた現地人材の頭脳の活用によって実現できると考えられる。
第六に、日系企業は販売現地化にかかわる販売部門などの経営幹部における現地職員の割合を拡大させる必要がある。現地人材のやる気を引き出すには販売実績に基づく報酬格差をつけるべきである、成果主義と能力主義の徹底導入が必要である。育成した現地人材の流失を防ぐために現地経営での権限委譲、福祉供給制度、評価システム、昇進制度などの見直しが必要である。
以上に提案した現地販売化促進方策を達成するには、中国における日系企業による現地経営戦略の下で、現地人材能力の最大限な発揮によってのみ実現できるものと考えられる。
五、おわりに
本文は日本企業の対中国直接投資の一課題である現地経営の販売現地化を分析した。各章の検証によって、販売現地化の実現は中国における日系企業の成功の鍵であることがわかった。
人材現地化は販売現地化成功における最大のキーワードという結論を得た。
本文は主にマクロの視点から日系企業の販売現地化を論じてきた。業種別、地域別をもって徹底的な分析するのは不十分である。誤った理解を導く恐れがある。したがって、業種別、地域別などを取り上げ、日本企業の現地販売化をより全面的、しかも客観的に分析するのが、今後の課題として残されている。私としては、今後、更に勉強する機会があれば、引き続きこれらの課題の研究と解明に取り組みたい。
参考文献:
\[1\]関満博.現地化する中国進出日本企業.新評論,2003.
\[2\]清家彰敏.中国企業と経営.角川学芸出版社,2005.
\[3\]黄磷.新興市場戦略論.千倉書房,2003.
\[4\]稲垣清.中国進出企業地図.蒼蒼社,2002.
\[5\]中国データ•ファイル2003/2004年版.日本貿易振興会,2004.
\[6\]此本臣吾.中国事業を取り巻く環境変化.
\[7\]謝端明.週刊東洋経済.2001-7-28.
\[8\]経済産業省.通商白書2003年版.2003.
\[9\]田浦里香.中国における日系企業の人材マネジメントのあり方.知的資産創造.野村総合研究所,2004,12.
直接投資消費市場販売現地化一、激化する国内市場の競争環境
中国の消費市場規模は急速に拡大している中で、日系企業の中国進出は加速しつつある。日本貿易振興会が実施したアンケート調査により、日本企業が販売先として重要視している市場は中国市場のウェイトが最も高く、それぞれ80.6%と28.3%である。今後の開拓市場に関する回答を見ると、ASEAN諸国の24.6%に対して中国は61.7%である。このアンケートからも日本企業の中国市場獲得意識が今後さらに高まることは確実と思われる。日本企業が中国に本格的に進出を開始してからほぼ15年、ようやく近年、中国国内市場での現地販売化への関心が高まってきた。しかし、日系企業の中国市場販売においては現地販売ルート整備や販売人材不足等の販売現地化の問題も顕在化させた。2003年度中国現地法人の撤退、移転の主な理由は販売不振である。
日系企業と欧米企業の中国市場をめぐる競争がますます激しくなっている。今後、中国市場の自由化に伴い、市場参入を目的とした欧米系企業の中国進出が更なる増加傾向にあるから、日系企業にとって中国市場における競争の厳しさがさらに増大することは間違いない。技術力とブランド力を有する日系企業は激化しつつある競争環境の中で、中国市場を販売先として、現地消費者に合う新製品の開発、生産コストの引下げ、中国国内販売ルートの整備、現地人材の有効活用などの課題の解決を迫られている。
現在の日系企業は人材流失の圧力に直面している。上海交大正源企業コンサルティング会社と日本能率協会がこのほど、ダイキン、オムロン、住友、三井化学など、数十社の日系企業に勤務している1万人以上の社員を対象に、「日系企業の給与•福祉に関する調査」を行い、大学卒業生の初任給、一般社員と管理職の給与の比較において、日系企業のほうが欧米の企業を大きく下回っていることが明らかとなった。
二、日米企業の販売現地化の比較
日本企業の中国進出や中国でのビジネスの難しさとして、商品を売っても代金回収がうまくできない、商慣行に合わないなどが挙げられる。中国の投資環境•経営環境に問題があるといわれている。一方、米国企業の中国現地法人は、中国市場での販売を重視し、これに成功した。中国における2003年度外資系企業500社売上ランキングのトップ10社によれば、米系企業のモトローラ(1位)、GM(8位)、デル(10位)が上位10社にランキングされている。これに対し、日系企業は1社も入らなかった。同じ環境で成功している米系企業が存在するのはなぜか。以下にその現状と原因を述べる。
1999年と2000年,米系企業の10%以上に対し日系企業の収益率は逆にマイナスであった。2001年日系企業の収益率は5.5%に達したが、米系企業収益率と比べ、未だ7ポイントの差があることがわかる。日系企業は、中国市場において、その需要の獲得に向けた取組みを拡大させているものの、米国企業と比較すれば、十分な収益を獲得できていない状況にあるということが言える。
収益率低下の原因を分析すれば、以下の要因を考えられる。まずは1990年代後半から、日本の対中大型投資は減少していた。中小企業の進出については回復していたが、素材産業等、中国経済にとってインパクトの強い大規模な投資が減っているため、中国における日系企業のプレゼンスは、契約ベースでも実行ベースでも、米系企業に比べると低かった。米系企業の対中直接投資実行額は2001年の累積実行額は日本を抜いて第2位を占めるようになった、米国の対中投資の方は大型化している。
もう一つ収益率に影響を与える要因は、日米企業の投資動機の相違である。米系企業の多くは中国市場に関して「現地市場対応型」の戦略に最初から絞り込み、中国の潜在市場の獲得を市場目標として明確にしている。これに対して、日系企業の中で、複数の参入動機をもち、「コスト競争対応型」と「現地市場対応型」の戦略を同時に展開している企業が多い。つまり、日系企業が対中投資した主要な目的の中に、豊富な労働力の活用があるのに対して、米系企業の参入動機はきわめて単純明快であり、中国の「潜在市場の大きさ」という点に集中している。また、日本企業は労働集約的産業に投資するのが多いことに対し、米系企業はハイテク産業、つまり、消費需要が大幅に増加することが可能な産業への先取り的進出が多い。例えば、モトローラ、GM、デルはそれぞれ通信産業、自動車産業、IT産業に進出している、これらの産業は市場開拓しやすいし、実績を出しやすいものである。
日本企業の生産現場重視や品質重視などの姿勢は中国で高く評価されているが、販売には必ずしもつながっていない。これに対して、欧米企業の総経理(社長)は、ほとんどが販売担当であることがよく言われる。欧米企業の販売に関する営業?顧客開拓と取引先?調達先の選定の権限委譲比率はそれぞれ92.3、66.7%である、米系企業は如何に現地販売を重視するのがわかる。意思決定権限の委譲によって中国消費市場の変化に対して、迅速な対応を取ることができると考えられる。例えば、中国市場において企業経営の徹底現地化をおこない、現地人を通じて、販売現地化を達成した米系企業のコカ•コーラは、中国市場の将来性と重要性を認識し、たとえ投資回収が遅れても、利益を海外送金できなくても、利益の再投資をすることや現地人経営者の権限委譲を通じて流通配送拠点の建設、配送ネットワークの構築、新たな販売拠点の開拓などより、将来の市場を確保する現地経営戦略を実施した。現在中国は、同社の世界市場でもっとも成長している市場となっており、中国市場での高いシェアを獲得している。現在、炭酸飲料市場で46%のシェアを占めている。
一方、日系企業は意思決定スピードの遅延により、日系企業のマーケットニーズに見合った製品の開発•投入や、現地における効率的な生産?調達体制の構築が阻害され、中国のマーケット及び消費者からも徐々に敬遠されている。製品販売などの場面における、現地の独特な商慣行に根ざしたネットワークを活用し切れないという非効率が生じている。
三、販売現地化の問題点
日系企業にとって、中国での販売現地化の強化と再構築が求められている。以下に日系企業の販売現地化の経営戦略における問題点を論じる。
1.現地販売ルート整備の遅れ
多くの日本企業は、長年続いてきた香港企業とのビジネス関係に縛られ、中国現地での販売ルートの整備、現地人材の育成は遅れている。今までは中国での外国企業に対する販売規制の問題に加えて、日系企業の中國国内販売は販売ルートの構築を避けて通ってきたケースが多かった。その代わりに資金力があり、規模の大きな総合卸業者に販売を任せ、つまり、一級卸から末端の販売店までの販売管理にメーカーが関与することが少なかった。その結果、メーカーの販売ルートに対する支配力は非常に弱いものとなっている。多くの販売代理店は、複数メーカーの製品を競わせながら、より有利な取引条件を出すことだけに関心がある。
2.現地販売体制構築の遅れ
欧米企業は、最初から中国市場を狙う進出が多い。多くの販売規制に対しては、中国の変化に期待しながら時には外圧で規制緩和を促したり、時には自社に有利な取引をしてもらうために管理部門と交渉したりして、規制緩和の先取りをしてきた。一部欧米企業は約10年も前から実質上の販売機能を構築していた。このような規制への対応の相違が、中国における日系企業の販売現地化を遅れる要因の一つと考えられる。
3.「持ち帰り型」の日系企業の戦略が現地販売に与える影響
まず、現地販売の強化への影響がある。親企業と現地工場との間の仕切り価格が現地経営を左右する。仕切り価格は、親企業の経営状況に基づいて設定し、調整されることが多い。親企業の経営にとっての調整機能を持っている。一方、現地工場においては、この調整機能を遂行するのみである。現地企業の経営業績には直接表れにくい構造がある。その結果、工場管理に対する評価基準も曖昧になる。現地経営管理者は、現地販売の強化への関心が薄くなる。
次に、現地人材育成への影響である。「持ち帰り型」の工場管理は、労動力の確保や訓練が中心である。現地経営にかかわる購買、販売、管理などの現地人材は不要である。中国に進出し、長い期間をへて、日本企業には工場管理のノウハウは蓄積されても、現地人材育成制度を欠いているため、現地販売を担う現地人材の育成はできなかった。その結果、現地代理店に任せの販売が多いのである。
4.現地人材育成の遅れ
「企業は人なり」という限り、人材育成はあらゆる事業成功上の重要なポイントになるべきものであり、日系企業の中国進出にとってもそれは一層重要性を増すものである。多くの日系企業には、資金力?技術力を持っているものの、人材力欠如のため、現地販売市場において、苦戦している。その原因を探求すれば、以下の原因を考えられる。
a)日系企業の中国進出当初の目的の多くが「労動力集約型加工生産」であった。つまり、工場運営の重点は労動者の労動力にあり、人材への重視と関心が最初から低かった。
b)日系企業が中国に進出した後も、日本国内の管理モデルを利用し、チームワークを強調し、社員の個性の発展を重視していない。
c)多くの日系企業では、部長、ひいては課長以上のポストを日本人のみに限定しているため、もっと大きな個人発展の余地の獲得をめざす中国の管理人材や技術者を引き止められないのも当然なことである。
四、販売現地化の促進
中国消費市場にあわせる活用対策を打ち出せば、日系企業にとって現地販売の更なる進展と拡大が十分期待できる。以下に日系企業の中国における販売現地化の促進方策を提案する。
第一に、日系企業は急速な環境変化に合わせて、販売ルート整備の見直しと販売体制の構築が必要である。従来の販売ルートを強化すると同時に、現地における独自能力の市場開拓による新規販売ネットワークを築くことを通じて、販売ルートに対する支配力を高め、売上代金未回収の発生を回避することができる。
第二に、販売代金回収の難しさを解消するために、販売現地化戦略として、相手に一定の信用供与が必要である。相手への信用供与を通じての代金回収への努力は、ビジネス事故やリスクを避ける有効な方法と考えられる。
第三に、中国での現地販売管理難はよくいわれている。多くの日系企業によるさまざまな取り組みが進められている。中国におけるIT技術の普及に目をつけて、販売管理システムの構築で成果を出しつつある日系企業もある。
第四に、現地販売を強化するために、ブランド力の構築、製品の魅力作り、中国における存在感の向上、そして企業のイメージ作りなどの広報活動の活用が必要である。今後、中国消費市場における競争の激化が宣伝•広告の激化をもたらすであろうと考えられる。情報が少ない時代は、少ない宣伝•広告で高い効果が得られていたのに対して、いまは多種多様な情報が氾濫し、消費者の心をつかむことはますます難しくなっている。このような背景の中で、宣伝?広告の効率をいかにあげるかが重要になってくる。現地人材の頭脳を通じて、現地消費者に商品を買いたい感覚を持たせる商品宣伝の工夫が不可欠である。
第五に、中國消費市場における競争相手との販売主導権競合で有利なポジションを確保するためには、製品価格競争優位性の保持と強化がもうひとつ重要なポイントである。この優位性を達成するには、現地消費市場ニーズに合わせる製品開発と現地調達率の向上が必要となる。中国消費者に合わせる製品の開発は中国現地風土に慣れた現地人材の頭脳の活用によって実現できると考えられる。
第六に、日系企業は販売現地化にかかわる販売部門などの経営幹部における現地職員の割合を拡大させる必要がある。現地人材のやる気を引き出すには販売実績に基づく報酬格差をつけるべきである、成果主義と能力主義の徹底導入が必要である。育成した現地人材の流失を防ぐために現地経営での権限委譲、福祉供給制度、評価システム、昇進制度などの見直しが必要である。
以上に提案した現地販売化促進方策を達成するには、中国における日系企業による現地経営戦略の下で、現地人材能力の最大限な発揮によってのみ実現できるものと考えられる。
五、おわりに
本文は日本企業の対中国直接投資の一課題である現地経営の販売現地化を分析した。各章の検証によって、販売現地化の実現は中国における日系企業の成功の鍵であることがわかった。
人材現地化は販売現地化成功における最大のキーワードという結論を得た。
本文は主にマクロの視点から日系企業の販売現地化を論じてきた。業種別、地域別をもって徹底的な分析するのは不十分である。誤った理解を導く恐れがある。したがって、業種別、地域別などを取り上げ、日本企業の現地販売化をより全面的、しかも客観的に分析するのが、今後の課題として残されている。私としては、今後、更に勉強する機会があれば、引き続きこれらの課題の研究と解明に取り組みたい。
参考文献:
\[1\]関満博.現地化する中国進出日本企業.新評論,2003.
\[2\]清家彰敏.中国企業と経営.角川学芸出版社,2005.
\[3\]黄磷.新興市場戦略論.千倉書房,2003.
\[4\]稲垣清.中国進出企業地図.蒼蒼社,2002.
\[5\]中国データ•ファイル2003/2004年版.日本貿易振興会,2004.
\[6\]此本臣吾.中国事業を取り巻く環境変化.
\[7\]謝端明.週刊東洋経済.2001-7-28.
\[8\]経済産業省.通商白書2003年版.2003.
\[9\]田浦里香.中国における日系企業の人材マネジメントのあり方.知的資産創造.野村総合研究所,2004,12.