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【Abstract】: With the aim of improving Chinese students' motivation of learning English, this paper introduces e-Learning and flipped learning. It summarizes existed research of flipped learning, and designs some types of flipped learning that are suitable for current Chinese college students, based on how they are learning college English in Chinese universities nowadays. After grouped experiments and research, data indicates that the students in experiment group, who adopted flipped learning, have made obvious progress in their motivation and test results.
【 Keywords】: e-Learning;Flipped Classroom;Active Learning;LMS
1.研究背景
1.1 ICT技術の発展:コンピューターの高性能化·低価格化と通信の大容量化·高速化に伴い、ICT技術は飛躍的に進展してきた。図1によると、日本におけるパソコンの世帯保有率は80%程度を維持している。また、特に近年、スマートフォンやタブレット端末を持つ人が急速に増えていることが明らかになった。
それと同時に、學校教育現場では、コンピューターや電子端末を使い、学習する機会も増えてきた。2000年頃からはe–Learning教材の研究·開発も注目されている。それに関する今までの教育研究では、「いつでもどこでも学習が可能」、「学習者のペースに合わせた学習が可能」、「学習者の学習履歴や学習データがすべて残る」、「教員の負担軽減」などの利点が明らかになった。その一方、対面授業とは異なり、教師と学習者が直接話す機会が少なくなるため、学習モチベーションの維持が難しいなどの問題点が指摘された(峯脇ほか,2011)。
1.2 反転授業への注目:また、最近、反転授業が注目を集めている。反転授業とは、家庭でいわゆる「授業」を映像教材等を用いて予習の形で受講し、学校の授業の時間では通常「宿題」として扱われる演習や、学習内容に関わる意見交換などを行うものである。MOOC発祥の米国では、州立大学を中心に他大学の講座を大学授業に採り入れる動きが広がっており、サンノゼ州立大学では、MOOC講座による反転授業を導入したことで、単位の取得率が59%から91%に大幅に向上したという事例も報告されている(Mohammad Qayoumi,2013)。
1.3 中国における教育改革:さらに、中国における教育改革の中核的理念は、「学生を中心とした教育」を実施し、「探求的な学習を強調する」ことだが、実際の教育現場では、郭(2010)によれば「文法訳読法を中心に」、「テスト勉強を重視する」といった主旨の授業がよく見られる。授業は教師の説明を中心として展開し、学習者は一生懸命メモをしている。大量の練習を単調に繰り返すだけで、学習意欲が低下していると考えられる。また、会話を重視した授業がされていないため、外国語を話せない学習者が多く出てくる。
2.研究目的
以上のような背景を基に、ますます高度化しているICT技術を活かし、アクティブラーニングを実現し、「能動的学習」並びに「学習者中心」を重視する反転授業の研究が必要だと考えられる。
本研究では,外国語教育においてアクティブラーニングを促進するため、反転授業の授業設計を提案し、模擬授業を行い、反転授業のモデル化を探求することを目的とする。
3.研究内容
本研究は、博士前期課程において研究してきたデータ駆動型学習理論の研究成果を踏まえた、反転授業を利用するアクティブラーニングの研究である。
4.先行研究
4.1.アクティブラーニング
文部科学省用語集(2013)によれば、教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学習者の能動的な学習への参加を取り入れた教授·学習法の総称である。学習者が能動的に学習することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ·ディスカッション、ディベート、グループ·ワーク等も有効なアクティブ·ラーニングの方法である。
4.2.反転授業
『朝日新聞(2014)』によれば、アメリカの大学の教員であるベーカー氏はインターネット上で学習者に授業開始前に小ビデオを見せ、練習テストをすべてオンラインで受けさせた。その後、教室で、教員の指導のもとで、グループ学習やディスカッションを通じて、知識の理解を深め、発展的な課題に取り組んだ。ベーカー氏はこれを「Classroom Flip」(反転教室)と名付けた。
その後、化学の教師であるジョナサン·バーグマンとアーロン·サムズは、授業を欠席した学習者に対して、授業をビデオに収録し、宿題として提供した。その後、彼らは録画したビデオを授業前に学習者に見せた。また、学習者一人一人の進捗度をコンピューターで管理し、授業中に行われた到達度テストの結果を踏まえて一人一人に合った授業を行うシステムを作り上げた。彼らはこれを「Flipped Classroom」(反転授業)と名付けた。さらに、反転授業の結果が確認された。例えば、クリントンデール高校では、落第率が61.2%から10.8%に激減したという成果も上がっていた。 今までの理論研究と実践研究を踏まえ、中国の学習者の学習習慣を考慮し、本研究の授業設計を行った。
5.本研究について
本研究では、中国のD大学の英語教員の協力のもと、大学英語における反転授業を取り入れた授業デザインを提案した。また、反転授業の効果を検証するため、反転授業の内容に合わせたe-Learning教材を作った。最後に、4つのクラス(クラスA:37人、クラスB:34人、クラスC:35人、クラスD:35人)で、模擬授業を行った。英語教員のW先生が担当しているクラスはAとBで、英語教員S先生が担当しているクラスはCとDである。クラスAとクラスCを実験群とし、クラスBとクラスDは対照群に設定した。実験群は反転授業の形式で、対照群は従来通り、対面授業の形で授業を行った。2015年10月末から、12月末の間で、模擬従業を行った。週に2回で、1回あたりの授業時間は90分である。また、指導効果の検証は以下の3つの方法で行われた。
1.テスト:授業を始める前に「英語レベル検定試験」を実施した。この試験をプレテストとして利用した。期末の時に、定期テストを行い、この試験をポストテストとして利用した。両テスト間の得点差について分析した。
2.アンケート調査:反転授業の学習方法と感想については、5段階評価と自由記述式アンケート調査の形式で実施した。
3. インタビュー調査:特徴のある学習者にインタビューを行い、実践授業について深く尋ねた。
6.予備調査
調査の実現可能性をチェックするため、筆者が2015年9月に、授業のオリエンテーションに参加していた学習者125名を対象として、アンケート調査を実施した。「今までの英語教育について満足していない」、「e-Learningと対面授業のブレンド型授業を試したい」、「毎日1時間以上インターネットを使用している」、「アウトプットの練習があまりできていない」などが分かった。調査結果から、本研究は実現可能だと判断した。
7.ビデオ教材
中国のD大学が指定している英語教材『New Standard College English』をベースにし、経験豊富な教員が長年の経験を活かし、反転授業の事前学習用の教材を提案した。5分程度の「ビデオ教材」と30分で終わらせる「インターネットに載せるe-Learning教材」の2つの部分から構成される。ビデオ教材については、iPhone 6Plus と iMovieを使い、ビデオの録画と編集を行った。
協力していただいた英語教員の方と相談した上で、ビデオ教材の内容を決定した。主に、次の学習内容の背景や達成目標を簡単に紹介した後、長期にわたる教育経験を踏まえてまとめた「分かりづらい点」、「間違いやすい点」を学習者に分かりやすく説明した。
8. e-Learning教材
インターネットに載せるe-Learning教材を作成するために、授業支援システムWebOCMnext[ 大阪大学サイバーメデイアセンターの細谷行輝教授を中心に、国立大学法人系の先生方と連携して、開発した学習支援システムである。](ウェブ·オーシーエムネクスト)の中国版「Sciplus(サイプラス)」を利用した。これは、特に語学に特化した学習支援システムであり、学習者の学習履歴、出席記録、テスト管理などの基本的な機能を持っている上、「辞書システム」、「自己弱点克服機能」、「ダイナミック教材作成システム」などの語学学習に必要な機能がすべて搭載されている。さらに、去年から新しく開発された「音声関連」機能が特に語学の教員から注目を集めている。「音声関連」機能はブラウザの世界では、実装が難しい機能であり、e-Learning教材に応用する先例が少ないためである。今回の研究では、アクティブラーニングを促すために、「音声関連」機能を活用した。
主に使用したe-Learning教材の機能は、a.ダイナミック教材作成機能、b.読み速度測定機能、c.音聲認識機能、d.アクセス制限機能である。
以下に、実際の教材の特徴的な部分について説明する。図4は教材のホームページである。ウェブページが左側と右側の2つのフレームに分かれていて、左側は目次で右側は教材内容の部分である。
図5は音声関連機能を利用した新出単語の学習画面である。左側の文章の中で、新出単語がボタン形式で作られ、単語をクリックしたら、右側の意味や単語の読み方が出てくる。マイクのアイコンをクリックしたら、発音のチェックができるというシステムになっている。
図6はアクセス制限機能の部分である。学習者がe-Learning教材ページ内の内容を学習せずに直接次の部分を閲覧することを防ぐためにアクセス制限をかけ、練習問題を正解しなければ次のステップに進めないという設定を行った。
9.授業の時間配分について
Bethel&Maine(1966)は学習の定着率について研究して、ラーニング·ピラミッド理論を提出した。ラーニング·ピラミッド理論によると、「講義は 5%、読書は10%、視聴覚は20%、デモンストレーションは 30%、グループ討論は50%、自ら体験するは75%、他の人に教えるは 90%」という記憶効率を数字の形で表している。したがって、今回の模擬授業の教室活動の部分は、グループディスカッションや発表を中心に展開していた。
具体的な授業の時間(90分)配分について、表1のようである。
表1授業の時間配分
10.模擬授業について
今回の模擬授業における、プレテストとポストテストの得点の推移を図7に示す。両テストの得点は経過にともなって向上する傾向が認められる。得点推移の有意差を分散分析で求めた結果を表2に示す。プレテスト·ポストテスト間の得点差について、t検定を行ったところ、有意差が見られた「t=3.62(139),p=0.004<0.05」。この得点差から、反転授業には効果があると認められた。 図8は学習者の詳細な学習データである。この學習データを用い、学習者の学習実態と成績の関連性が見られることが判明した。この貴重なデータを利用し、教材の改善や反転授業のモデル化に繋げたいと考える。
11.結果と評価
(1)得点差。反転授業を導入した実験群には、普通の対面授業を受ける対照群と比べ、プレテストとポストテストの間には有意な得点(p<0.05)上昇が見られた。
(2)アンケート調査。実践授業の最後に、実験群に対して、アンケート調査を行った。アンケート調査では、項目全体を通じて、反転授業について概ね肯定的な評価となっていた。特に、「やる気が出た」と答えた学習者が86.3%に上った。これは反転授業の授業形態の導入により、学習者がアクティブになった一証左だといえるだろう。さらに、学習者が自分の英語に自信を持つようになったということがわかった。
(3)学習履歴のデータ。ポストテストの得点を基準として、上位·中位·下位の3群に分けた。上位·中位·下位の3群の学習総時間、練習テストの平均得点、文章に対する理解度、出席率、質問数などの項目について、比較し検討した。中位群が上位群および下位群よりも、学習総時間が長くて、出席率が高いことがわかった。練習テストの平均得点と文章に対する理解度が高いのは上位群である。質問数が多いのは下位群である。
(4)インタビュー調査。実験群に対して、テストの得点から上位群下位群に分けた。上位·中位·下位の3群から、それぞれ学習者3名ずつをランダムに抽出し、学習状況について、インタビュー調査を行った。上位群の学習者はすでに新出単語や文法構造をすでにわかっていたので、新出単語の暗記時間を短縮した。そのため、学習総時間が短くなった。その一方、中位群の学習者が成績を上げるため、授業中に、他の学習者とコミュニケーションやディスカッションしたいという要望が強いので、学習総時間と出席率が一番高い。下位群の英語レベルが低いため、単語や文章に対する質問数が一番多い。自力で勉強するのが難しいと答えた下位群の学習者が出たので、出席率が一番低い。
12.まとめ
本研究は、アクティブラーニングを促進するため、反転授業を導入した。また、中国の大学において、大学の1回生を対象に、模擬授業を行った。実験群(反転授業)と対照群(対面授業)に分け、プレテストとポストテストを実施し、実験群の得点上昇が高いことが分かった。さらに、実験群に対し、アンケート調査を行い、学習履歴などのデータを分析した。学習意欲を高められ、積極的に学ぶ姿勢を持たせたという結果であった。今回の学習者にとって、反転授業が十分に受け入れられることを示唆している。反転授業の導入により、学習者がアクティブラーニングを図るための適切な指導方法の一つではないかと考える。今後、今回集まったデータをもとに、学習能力と成績のバラツキがある学習者にe-Learning教材の改善や学習者にサポートするために、TA制度の導入を進めていきたいと考えている。
参考文献:
[1]朝日新聞 『「教わる」からの卒業模索 端末で予習、授業で反復』1面と2面(2014.1).
[2]岩下志乃,伊藤雅仁,大野澄雄,亀田弘之, “反転授業を導入した授業改革の取り組み「大学教育と情報」”,pp.2-7(2014).
[3]重田勝介,布施泉,岡部成玄, “オープン教材を用いた反転授業の実践と分析” 日本教育工学会第29回全国大会口頭発表. (2013.9).
[4]総務省『平成27年版 情報通信白書のポイント』(2015).
[5]文部科学省『用語集』 pp.3、4、9(2013).
[6]峯脇さやか,嶋田和孝,遠藤勉,弓削商船,「対話型 e-Learning システムの開発」 言語処理学会,pp.916-919(2011).
[7]郭林科,「浅析我国大学英语教学现状, 问题及对策」 『科技信息』,pp.245(2010).
[8]中国教育部『教育信息化十年发展规划(2011-2020年) 』(2012).
[9]文部科学省中央教育審議会用語集,「http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/10/04/1325048_3.pdf」(2012)(2016/10/13アクセス) .
[10]Bonwell, C. C. & Eison, J. A., Active Learning: Creating Excitement in the Classroom, Washinton. D. C: Jossey-Bass (1991).
[11]Mohammad Qayoumi,サンノゼ州立大学におけるMOOCと反転授業の実』 反転授業公開研究会 口頭発表. (2013).
[12]Simon Greenall , “New standard college English” 外语教学与研究出版社 (2009).
【 Keywords】: e-Learning;Flipped Classroom;Active Learning;LMS
1.研究背景
1.1 ICT技術の発展:コンピューターの高性能化·低価格化と通信の大容量化·高速化に伴い、ICT技術は飛躍的に進展してきた。図1によると、日本におけるパソコンの世帯保有率は80%程度を維持している。また、特に近年、スマートフォンやタブレット端末を持つ人が急速に増えていることが明らかになった。
それと同時に、學校教育現場では、コンピューターや電子端末を使い、学習する機会も増えてきた。2000年頃からはe–Learning教材の研究·開発も注目されている。それに関する今までの教育研究では、「いつでもどこでも学習が可能」、「学習者のペースに合わせた学習が可能」、「学習者の学習履歴や学習データがすべて残る」、「教員の負担軽減」などの利点が明らかになった。その一方、対面授業とは異なり、教師と学習者が直接話す機会が少なくなるため、学習モチベーションの維持が難しいなどの問題点が指摘された(峯脇ほか,2011)。
1.2 反転授業への注目:また、最近、反転授業が注目を集めている。反転授業とは、家庭でいわゆる「授業」を映像教材等を用いて予習の形で受講し、学校の授業の時間では通常「宿題」として扱われる演習や、学習内容に関わる意見交換などを行うものである。MOOC発祥の米国では、州立大学を中心に他大学の講座を大学授業に採り入れる動きが広がっており、サンノゼ州立大学では、MOOC講座による反転授業を導入したことで、単位の取得率が59%から91%に大幅に向上したという事例も報告されている(Mohammad Qayoumi,2013)。
1.3 中国における教育改革:さらに、中国における教育改革の中核的理念は、「学生を中心とした教育」を実施し、「探求的な学習を強調する」ことだが、実際の教育現場では、郭(2010)によれば「文法訳読法を中心に」、「テスト勉強を重視する」といった主旨の授業がよく見られる。授業は教師の説明を中心として展開し、学習者は一生懸命メモをしている。大量の練習を単調に繰り返すだけで、学習意欲が低下していると考えられる。また、会話を重視した授業がされていないため、外国語を話せない学習者が多く出てくる。
2.研究目的
以上のような背景を基に、ますます高度化しているICT技術を活かし、アクティブラーニングを実現し、「能動的学習」並びに「学習者中心」を重視する反転授業の研究が必要だと考えられる。
本研究では,外国語教育においてアクティブラーニングを促進するため、反転授業の授業設計を提案し、模擬授業を行い、反転授業のモデル化を探求することを目的とする。
3.研究内容
本研究は、博士前期課程において研究してきたデータ駆動型学習理論の研究成果を踏まえた、反転授業を利用するアクティブラーニングの研究である。
4.先行研究
4.1.アクティブラーニング
文部科学省用語集(2013)によれば、教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学習者の能動的な学習への参加を取り入れた教授·学習法の総称である。学習者が能動的に学習することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ·ディスカッション、ディベート、グループ·ワーク等も有効なアクティブ·ラーニングの方法である。
4.2.反転授業
『朝日新聞(2014)』によれば、アメリカの大学の教員であるベーカー氏はインターネット上で学習者に授業開始前に小ビデオを見せ、練習テストをすべてオンラインで受けさせた。その後、教室で、教員の指導のもとで、グループ学習やディスカッションを通じて、知識の理解を深め、発展的な課題に取り組んだ。ベーカー氏はこれを「Classroom Flip」(反転教室)と名付けた。
その後、化学の教師であるジョナサン·バーグマンとアーロン·サムズは、授業を欠席した学習者に対して、授業をビデオに収録し、宿題として提供した。その後、彼らは録画したビデオを授業前に学習者に見せた。また、学習者一人一人の進捗度をコンピューターで管理し、授業中に行われた到達度テストの結果を踏まえて一人一人に合った授業を行うシステムを作り上げた。彼らはこれを「Flipped Classroom」(反転授業)と名付けた。さらに、反転授業の結果が確認された。例えば、クリントンデール高校では、落第率が61.2%から10.8%に激減したという成果も上がっていた。 今までの理論研究と実践研究を踏まえ、中国の学習者の学習習慣を考慮し、本研究の授業設計を行った。
5.本研究について
本研究では、中国のD大学の英語教員の協力のもと、大学英語における反転授業を取り入れた授業デザインを提案した。また、反転授業の効果を検証するため、反転授業の内容に合わせたe-Learning教材を作った。最後に、4つのクラス(クラスA:37人、クラスB:34人、クラスC:35人、クラスD:35人)で、模擬授業を行った。英語教員のW先生が担当しているクラスはAとBで、英語教員S先生が担当しているクラスはCとDである。クラスAとクラスCを実験群とし、クラスBとクラスDは対照群に設定した。実験群は反転授業の形式で、対照群は従来通り、対面授業の形で授業を行った。2015年10月末から、12月末の間で、模擬従業を行った。週に2回で、1回あたりの授業時間は90分である。また、指導効果の検証は以下の3つの方法で行われた。
1.テスト:授業を始める前に「英語レベル検定試験」を実施した。この試験をプレテストとして利用した。期末の時に、定期テストを行い、この試験をポストテストとして利用した。両テスト間の得点差について分析した。
2.アンケート調査:反転授業の学習方法と感想については、5段階評価と自由記述式アンケート調査の形式で実施した。
3. インタビュー調査:特徴のある学習者にインタビューを行い、実践授業について深く尋ねた。
6.予備調査
調査の実現可能性をチェックするため、筆者が2015年9月に、授業のオリエンテーションに参加していた学習者125名を対象として、アンケート調査を実施した。「今までの英語教育について満足していない」、「e-Learningと対面授業のブレンド型授業を試したい」、「毎日1時間以上インターネットを使用している」、「アウトプットの練習があまりできていない」などが分かった。調査結果から、本研究は実現可能だと判断した。
7.ビデオ教材
中国のD大学が指定している英語教材『New Standard College English』をベースにし、経験豊富な教員が長年の経験を活かし、反転授業の事前学習用の教材を提案した。5分程度の「ビデオ教材」と30分で終わらせる「インターネットに載せるe-Learning教材」の2つの部分から構成される。ビデオ教材については、iPhone 6Plus と iMovieを使い、ビデオの録画と編集を行った。
協力していただいた英語教員の方と相談した上で、ビデオ教材の内容を決定した。主に、次の学習内容の背景や達成目標を簡単に紹介した後、長期にわたる教育経験を踏まえてまとめた「分かりづらい点」、「間違いやすい点」を学習者に分かりやすく説明した。
8. e-Learning教材
インターネットに載せるe-Learning教材を作成するために、授業支援システムWebOCMnext[ 大阪大学サイバーメデイアセンターの細谷行輝教授を中心に、国立大学法人系の先生方と連携して、開発した学習支援システムである。](ウェブ·オーシーエムネクスト)の中国版「Sciplus(サイプラス)」を利用した。これは、特に語学に特化した学習支援システムであり、学習者の学習履歴、出席記録、テスト管理などの基本的な機能を持っている上、「辞書システム」、「自己弱点克服機能」、「ダイナミック教材作成システム」などの語学学習に必要な機能がすべて搭載されている。さらに、去年から新しく開発された「音声関連」機能が特に語学の教員から注目を集めている。「音声関連」機能はブラウザの世界では、実装が難しい機能であり、e-Learning教材に応用する先例が少ないためである。今回の研究では、アクティブラーニングを促すために、「音声関連」機能を活用した。
主に使用したe-Learning教材の機能は、a.ダイナミック教材作成機能、b.読み速度測定機能、c.音聲認識機能、d.アクセス制限機能である。
以下に、実際の教材の特徴的な部分について説明する。図4は教材のホームページである。ウェブページが左側と右側の2つのフレームに分かれていて、左側は目次で右側は教材内容の部分である。
図5は音声関連機能を利用した新出単語の学習画面である。左側の文章の中で、新出単語がボタン形式で作られ、単語をクリックしたら、右側の意味や単語の読み方が出てくる。マイクのアイコンをクリックしたら、発音のチェックができるというシステムになっている。
図6はアクセス制限機能の部分である。学習者がe-Learning教材ページ内の内容を学習せずに直接次の部分を閲覧することを防ぐためにアクセス制限をかけ、練習問題を正解しなければ次のステップに進めないという設定を行った。
9.授業の時間配分について
Bethel&Maine(1966)は学習の定着率について研究して、ラーニング·ピラミッド理論を提出した。ラーニング·ピラミッド理論によると、「講義は 5%、読書は10%、視聴覚は20%、デモンストレーションは 30%、グループ討論は50%、自ら体験するは75%、他の人に教えるは 90%」という記憶効率を数字の形で表している。したがって、今回の模擬授業の教室活動の部分は、グループディスカッションや発表を中心に展開していた。
具体的な授業の時間(90分)配分について、表1のようである。
表1授業の時間配分
10.模擬授業について
今回の模擬授業における、プレテストとポストテストの得点の推移を図7に示す。両テストの得点は経過にともなって向上する傾向が認められる。得点推移の有意差を分散分析で求めた結果を表2に示す。プレテスト·ポストテスト間の得点差について、t検定を行ったところ、有意差が見られた「t=3.62(139),p=0.004<0.05」。この得点差から、反転授業には効果があると認められた。 図8は学習者の詳細な学習データである。この學習データを用い、学習者の学習実態と成績の関連性が見られることが判明した。この貴重なデータを利用し、教材の改善や反転授業のモデル化に繋げたいと考える。
11.結果と評価
(1)得点差。反転授業を導入した実験群には、普通の対面授業を受ける対照群と比べ、プレテストとポストテストの間には有意な得点(p<0.05)上昇が見られた。
(2)アンケート調査。実践授業の最後に、実験群に対して、アンケート調査を行った。アンケート調査では、項目全体を通じて、反転授業について概ね肯定的な評価となっていた。特に、「やる気が出た」と答えた学習者が86.3%に上った。これは反転授業の授業形態の導入により、学習者がアクティブになった一証左だといえるだろう。さらに、学習者が自分の英語に自信を持つようになったということがわかった。
(3)学習履歴のデータ。ポストテストの得点を基準として、上位·中位·下位の3群に分けた。上位·中位·下位の3群の学習総時間、練習テストの平均得点、文章に対する理解度、出席率、質問数などの項目について、比較し検討した。中位群が上位群および下位群よりも、学習総時間が長くて、出席率が高いことがわかった。練習テストの平均得点と文章に対する理解度が高いのは上位群である。質問数が多いのは下位群である。
(4)インタビュー調査。実験群に対して、テストの得点から上位群下位群に分けた。上位·中位·下位の3群から、それぞれ学習者3名ずつをランダムに抽出し、学習状況について、インタビュー調査を行った。上位群の学習者はすでに新出単語や文法構造をすでにわかっていたので、新出単語の暗記時間を短縮した。そのため、学習総時間が短くなった。その一方、中位群の学習者が成績を上げるため、授業中に、他の学習者とコミュニケーションやディスカッションしたいという要望が強いので、学習総時間と出席率が一番高い。下位群の英語レベルが低いため、単語や文章に対する質問数が一番多い。自力で勉強するのが難しいと答えた下位群の学習者が出たので、出席率が一番低い。
12.まとめ
本研究は、アクティブラーニングを促進するため、反転授業を導入した。また、中国の大学において、大学の1回生を対象に、模擬授業を行った。実験群(反転授業)と対照群(対面授業)に分け、プレテストとポストテストを実施し、実験群の得点上昇が高いことが分かった。さらに、実験群に対し、アンケート調査を行い、学習履歴などのデータを分析した。学習意欲を高められ、積極的に学ぶ姿勢を持たせたという結果であった。今回の学習者にとって、反転授業が十分に受け入れられることを示唆している。反転授業の導入により、学習者がアクティブラーニングを図るための適切な指導方法の一つではないかと考える。今後、今回集まったデータをもとに、学習能力と成績のバラツキがある学習者にe-Learning教材の改善や学習者にサポートするために、TA制度の導入を進めていきたいと考えている。
参考文献:
[1]朝日新聞 『「教わる」からの卒業模索 端末で予習、授業で反復』1面と2面(2014.1).
[2]岩下志乃,伊藤雅仁,大野澄雄,亀田弘之, “反転授業を導入した授業改革の取り組み「大学教育と情報」”,pp.2-7(2014).
[3]重田勝介,布施泉,岡部成玄, “オープン教材を用いた反転授業の実践と分析” 日本教育工学会第29回全国大会口頭発表. (2013.9).
[4]総務省『平成27年版 情報通信白書のポイント』(2015).
[5]文部科学省『用語集』 pp.3、4、9(2013).
[6]峯脇さやか,嶋田和孝,遠藤勉,弓削商船,「対話型 e-Learning システムの開発」 言語処理学会,pp.916-919(2011).
[7]郭林科,「浅析我国大学英语教学现状, 问题及对策」 『科技信息』,pp.245(2010).
[8]中国教育部『教育信息化十年发展规划(2011-2020年) 』(2012).
[9]文部科学省中央教育審議会用語集,「http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/10/04/1325048_3.pdf」(2012)(2016/10/13アクセス) .
[10]Bonwell, C. C. & Eison, J. A., Active Learning: Creating Excitement in the Classroom, Washinton. D. C: Jossey-Bass (1991).
[11]Mohammad Qayoumi,サンノゼ州立大学におけるMOOCと反転授業の実』 反転授業公開研究会 口頭発表. (2013).
[12]Simon Greenall , “New standard college English” 外语教学与研究出版社 (2009).