近世の日本において、儒学思想を受容した故、武士道が士道という新たな方向に転化して行った。士道論が大勢を占める時代、伝統的な武士道の誇りを復活する志を抱いた武士思想家は依然として自分の理想のために努力していた。山本常朝と著書『葉隠』はその時の代表であった。『葉隠』が語っている武士道は士道よりもっと古くて、なおいっそう武士本来の精神に近づくという純粋性があるから、武士道の研究に不可欠のものとなっている。　　 本論文は『葉隠』の本文に基づいて、先ず『葉隠』的武士道における最も代表的なこと、即ち「死狂い」の精神をきっかけにして、作者が唱えている死生観を分析する。そして、「死狂い」の精神は武士個人に如何な影響を与え、武家社会にどういう衝撃を及ぼすことを討論する。　　 次に、武士の日常の奉公に瞳を凝らし、奉公を通して武士の奉公精神を見つける。そして、奉公と武士個人の関係を分析し、『葉隠』的武士道の奉公は滅私と緊密に繋がっているという観点を引き出す。　　 最後に、「死狂い」と奉公と両方を綜合して、『葉隠』的武士道の深層に隠れている忠の精神を掘り出し、その忠の特性によって、「忠狂い」と定義する。そして、「忍恋」という概念を引き出し、もう一歩「忠狂い」の精神を説明し、「忠狂い」は『葉隠』的武士道の神髄である結論を得る。